省エネ・健康リフォーム
省エネ・健康リフォームは
段階的な断熱によるヒートショック緩和から考えます。
地球環境と人の健康両方に悪影響を及ぼす日本の家
日本の家は先進国の中でも特に寒く、傍で暖をとる炬燵や小さい部屋単位の暖房機が一般的で、北海道を除くと家全体を暖房しようとする習慣はありませんでした。先進国で雪国でもある日本なのに、この習慣で良しとしてきたために、全体を暖房して温かくするようにつくられていないのです。
住宅に関する政策が遅れていた日本は、2050年までにカーボンニュートラルを目指す目標をかかげた今、やっとあらたな省エネ法が新築に適用され、補助制度も盛り込まれるようになりました。
しかし既存住宅については、思うように改善が進みません。
この結果、ほぼ無断熱の寒い家で暮らしている日本が高齢化社会を迎えて、ヒートショック(家の中の温度差による健康被害)が大きな社会問題となってしまっています。
省エネルギーより先に健康対策から考える
断熱化リフォームの目的として主に「省エネルギー化」「住まいを快適にしたい」「体の健康のため」の3つがあげられますが、「快適」「健康」と違って「省エネ」は住む人のためと考えると少し違ってきます。光熱費などの副次的効果はありますが、あくまでも本来の目的はCO2の削減とエネルギーの枯渇対策で、地球環境のため、人類のためです。
省エネルギー化を目的とする断熱は一定以上広い範囲を施工しなければならないため、リフォームにおいては壁や天井を剥がす解体とその復旧費用がとても多くなります。
住まい手にとって省エネだけだと直接的なメリットが小さく、そうそう大きなリフォーム費用をかけられるものではありません。しかし体や健康のためになるならやりたいと、誰もそう思います。
温度差を無くしてヒートショックの緩和を目的に
それでは、「省エネ」は一旦置いておいて、「健康」に絞って考えるとどうでしょう。通常のリフォーム範囲だけをヒートショック緩和のために断熱化する、というように計画すれば、解体と復旧ははじめから計画されているので、追加でかかる費用はそれほど大きくありません。
浴室周りが断熱化によってあたたかくなると、それだけで浴室事故の危険が減り、結露によるカビも少なくなります。そのくらいメリットが大きければ導入しやすくならないでしょうか?
断熱化は範囲を広げると健康効果とともに省エネルギー効果もアップします。浴室を出発点として、どの範囲が目的と予算に合うのがを検討しながらステップアップを行う、そんな提案方法を後述します。
冬になると「我が家が寒い!」と感じる事はありませんか
家が寒いのは「不快」ですが、寒さと温かさが混在すると「危険」になります。健康を目的とする理由、なぜヒートショックがそれほど問題になるのをを、現在大きな社会問題として起こっている浴室事故から解説します。
従来の家は、暖房されているのにじっとしていると足元がスースー。体が冷えて仕方ないですよね。こういう時は、熱いお風呂にゆっくりつかって芯からあたたまりたい!と思いませんか?
実はこれがとても危険で、この一連の動作が人の体に大きなダメージを与えてしまいます。
寒いから熱いお風呂に浸かるのが、なぜいけない?
部屋が寒いほど、人は熱いお風呂に入る傾向があります。当然のことだとお思いでしょうが、実はこれが体にとってとても危険なことなのです。
なんとなく寒いな、と思いながら部屋にいる時は、人の体は血圧が上がっています。その状態から、風呂に入って温まるために寒い廊下を通り寒い脱衣場で衣服を脱ぎ、つめたい風呂場に足を踏み入れると?
熱いお湯に浸かりたい!となりますよね。
このとき血圧が高い状態で熱いお湯に浸かることになります。すると、
温まって血管が膨張し、一気に血圧が下がります。そしてじき熱中症と脱水症状によって体が動かなくなり・・・
結果浴槽内で意識を失い、最悪溺死に至るケースも少なくありません。
そうならないためには?
まず、自分で出来る対策があります。
お湯が熱く、浸かる時間が長いほどこの影響が強いため、お風呂の温度を41℃以下、入浴は10分以内。これを守るようにします。
くつろいでいる部屋が寒ければ寒いほど熱いお風呂に入る傾向があるので、リビングを含中心に廊下や脱衣場などを、しっかり暖房して温かい状態に保つことです。
段階的に無理なく計画する
上記のように自分で出来る対策には限界がある上に、温度差の改善が小さい割に、かえってエネルギーの浪費や結露によるカビの発生を増やすという問題が起こります。
現在、社会問題としてのヒートショック事故を撲滅する研究が進み、自治体からも情報発信をしたり、助成を行う動きが出ています。少しでも浴室事故をしってもらい、無くす事が狙いです。
建物の断熱性能を改善することが対策として理想であることから、少しでも導入しやすくするために、浴室周りだけに限定した小さな範囲からの提案方法が考えられていいます。
これを出発点として、リフォームの必要性に応じて範囲を広げることを検討し、なるべく広い行動範囲の危険を減らしていくように考えます。このように段階的な選択が出来ることによって、資金的にあきらめることなく予算と家族の状況に合った検討が出来るようになりました。
段階的な断熱リフォームの例
浴室を断熱ユニットバスに取替える際、一緒に廻りの壁や屋根、窓を断熱化する
浴室工事に加えて脱衣室とトイレをワンルーム化して断熱を行い、水周りを完結させる
キッチンを取り替えるリフォームを伴う場合は、配管のために壊す床と一緒に壁と天井を断熱化する
畳床のフローリング化や床の老朽化などで手を入れる場合に、1階のすべての床を断熱する。
更に窓、壁を断熱化して、1階を完結させる
ヒートショック緩和を行うことは、快適で健康、省エネルギーにするためと方法が同じです。
上に挙げた段階的なリフォームの例は、水回りのリフォームから間取り変更まで共通したすべてのリフォームに当てはまる、「室内を解体するなら是非断熱しましょう」という提案です。
浴室事故だけでなくリビングや寝室なども、温度差のストレスや結露による健康被害がたくさんあるので、リフォームを行う時には必ずこの提案を取り入れていただきたいと思っています。
以下参考になる冊子をご紹介します。