リノベーション事例
~公園の辺の家~
鉄筋コンクリート造の半地下と木造2階建て、築40年以上経つ住まい。
目の前には湖畔を思わせる大きな池と、緑豊かで静かな公園があります。
計画は5年間空き家になっていた以前の住まいを、終の棲家としてリニューアルしました。
―完成写真―
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設計・施工で工夫した点
和室はキッチンと繋いでダイニングルームに。しつらえは和室のままで以前とほぼ変わらないので、タイル貼りのモダンなキッチン一体としてどことなく大正ロマン風な仕上がりとしています。アイランド風キッチンを囲む収納家具は、台形の部屋の使いにくさを解消するアイデアです。
2階は全て床暖房。キッチンは壁、床とも高性能断熱材に変りとても快適に。1階も床断熱を行い、底冷えしていたコンクリートの冷たさが緩和されます。
玄関はシューズクローゼットとつなげて広くすっきりさせ、明るくなりました。広くなった玄関に、かつて和室に置かれていた違い棚風の家具をしつらえました。
脱衣室の扉も奥に移動して、洗面とトイレまで玄関との一体空間としています。
使わなくなったバルコニーは車庫の屋根として残して、リビングから公園の借景がみえる大きな出窓に変えて、広がりを愉しむ窓としました。この部屋にはもともとあったオーディオ・スビーカー棚を改造して、格子戸風の収納とテレビ台につくり替え。植木もすっきり剪定して、みちがえるほど明るくなりました。
1階はコンクリートの仕切り壁が多く、扉の開口や天井が低いため、開放的に明るくするのがどこまで出来るか、というところがポイントでした。少しづつ変わった間仕切り位置に対して、コンクリートに埋め込まれたスイッチや照明の配線、水道配管を移動する事が出来ず、その都度検討し位置の調整や工夫を行っています。
既存住宅の状況
建物は築年数も古く5年ほど空き家になっていたため、手を入れて良いのか迷うほど傷みも進んでいました。
庭の木もずっと手入れもされず、伸び放題の状態でした。
リノベーションの目的は、都心に住まいをお持ちの施主様のセカンドハウスとして、いずれは終の棲家となる、おちついてゆっくり過ごすための住まいにつくり変える事です。
家の正面は道路を挟んで一面大きな池のある公園。
2階の居間から眺めているだけで落ち着く、とても良い立地にはる建物です。
ところが家の入口である玄関は、半地下の車庫に面し、少し奥まったところにあります。
建物に入ると一階は階段と水回りだけ。中は狭く、じめじめした空間でした。
1階の半分以上が車庫とボイラー室のため、裏口から入るような閉鎖的なイメージがあり、家の顔となる玄関が明るく素敵にしない限りこの家に住みたいと思えない、そんな印象を持ちました。
問題は、この1階が鉄筋コンクリート造。簡単に大きな変更を加える事が出来ません。
1階にあがるとキッチン、リビング、和室と3分割されていて、和室とリビングだけは3枚引き戸でつながっていました。
和室は明るい縁側があり、床の間と押入れ下に地窓をしつらえてある立派な造りの和室。
当初の計画ではこの和室を残して3分割のままで行こう、というものでした。
和室とつながるリビングは、道路ごしに大きな公園があって、目の前に広がる借景と東南に面した明るさがとてもここちよい場所です。
残るキッチンは北側に面し、勝手口があって便利な場所ではあるものの、入口の扉で階段とつながるだけの、どこか納戸的な奥まった部屋、という印象でした。
そしてキッチンには大きな問題があり、雨漏りの影響で出窓が二つとも崩れかけ、壁も雨染みが多く腐食しかけていました。
雨漏りの対策と修理
キッチンの雨漏りの多くは床。原因は外の勝手口の土間です。ここが2階の室内の床コンクリートより高くなっていて、二階の床に侵入していました。
また、それとは別に天井の方からも雨が入っていました。
床に関しては、もともとのつくり方が問題で、勝手口などの外階段でのコンクリート造と木造の取り合いのすべて構造優先になっているため、雨仕舞を後回しにしてしまった結果だと思えます。
天井の方は増築部の屋根の継手。
3階に増築をしていて、その屋根のつなぎ方が雨仕舞に不利な「谷」をつくる形になっていました。その谷が水をはけきれずに雨漏りとなっていたようです。
またこの谷は流れ落ちる雨水を受ける部分が水量を処理しきれずそのまま下に落ちていました。
落ちた先が、キッチンの勝手口の土間。これが床の雨漏りを助長させていたのです。
屋根の修理と、勝手口土間の防水を行い、内側からも防水処理をしました。傷んだ土台を補強して朽ち果てた柱は隣にもう1本抱かせて補強。その他の腐食部分は全て入れ替え。断熱材も全て取り替えて完全にあたらしいものに。
これで安心です。